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名古屋地方裁判所 平成6年(行ウ)14号 判決

原告 西尾要

原告 西尾治郎

原告 西尾修

原告 落合良一

原告 西尾すず

原告 落合春美

原告 落合君江

原告 落合四十二

原告 落合外一

原告 稲垣勝利

原告 落合進

原告 落合小夜子

原告 梶田冨美子

原告 落合治夫

原告 西尾かま

原告 西尾幸三

原告 白石勝美

原告ら訴訟代理人弁護士 池田伸之

被告 愛知県知事 神田真秋

被告訴訟代理人弁護士 大場民男

被告指定代理人 福田力雄

同右 東地明

同右 原晃一

同右 岡本浩平

同右 石川賢一

同右 伊藤克博

同右 兼松啓子

同右 奥田英津子

同右 仲智史

同右 波多野克也

主文

一  本件訴えのうち、被告が、平成六年三月一四日付けでした、別表「訴外人らに対する処分」記載の「所有者」欄記載の者に対し、それぞれ「従前地」欄記載の各土地に対する換地として、「換地」欄記載の各土地を指定するとの処分の取消しを求める部分を、いずれも却下する。

二  被告が、平成六年三月一四日付けでした、別表「原告らに対する処分」記載の「所有者」欄記載の原告らに対し、それぞれ「所有権に関する明細の従前地」欄記載の各土地に対する換地として、「所有権に関する明細の換地」欄記載の各土地を指定するとの処分を、いずれも取り消す。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が、平成六年三月一四日付けでした、別表「訴外人らに対する処分」記載の「所有者」欄記載の者に対し、それぞれ「従前地」欄記載の各土地に対する換地として、「換地」欄記載の各土地を指定するとの処分を、いずれも取り消す。

二  主文第二項同旨

第二事案の概要

本件は、県営土地改良事業の施行者である被告が、平成六年三月一四日付けで原告ら及び訴外人らに対してした換地処分について、原告らが、各換地処分が、照応の原則に違反する等と主張して、その取消しを求めるものである。

一  争いのない事実等

1  被告は、昭和五三年六月二日、事業計画が確定した愛知県営ほ場整備事業篠岡地区(以下「本件事業」という。)の施行者であり、原告らは、いずれも、右本件事業の施行地区である大草工区(以下「本件工区」という。)内に土地を所有する者である。

被告は、同年九月二七日篠岡地区土地改良区(以下「改良区」という。)の設立を認可し、以後、改良区に本件事業の業務の実施を委託してきた。

以下、本件事業の施行地区内に土地を所有する者を、改良区における慣用表現に習い「組合員」という。

2  被告は、平成六年三月一四日付けで、原告らに対し、別表「原告らに対する処分」の「所有権に関する明細の従前地」欄記載の各土地に対する換地として、「所有権に関する明細の換地」欄記載の各土地を指定し(以下、原告らに対する各換地処分を、いずれも「本件換地処分」という。)、同月一八日ころ、原告らに通知した。

なお、弁論の全趣旨によると、右別表中、原告落合春美欄記載の本件換地処分は、権利者を落合悦男として同人宛に処分通知がなされたが、同人は本件換地処分当時既に死亡していたこと、同人の法定相続人は妻である原告落合君江、長女である原告落合春美、次女千雪、三女宏子、養子員明の五人であることが認められる。原告落合春美は、本件換地処分当時、右従前地は遺産分割協議により同人の単独所有であったと主張するが、この事実を認めるに足りる証拠はない。

右事実によれば、落合悦男宛の換地処分は、本件換地処分当時、右別表の落合春美の「従前地」欄記載の土地を共有していた前記相続人五人に対してされたものというべきであるが、相続により共有となった土地にされた換地処分について、その取消しを求める訴えの提起は、共有物に対する保存行為であるから、共有者全員が共同して提起することを要しないものであり、原告落合春美には本件訴えの原告適格が認められる。

3  被告は、本件換地処分と同日付けで、訴外奥村聡、同落合孝雄及び同井戸田録郎(以下まとめて「訴外人ら」という。)に対しても、別表「訴外人らに対する処分」のとおり、換地処分を行った。

二  本案前の抗弁についての原告西尾要と被告の各主張

(原告西尾要の主張)

原告西尾要は、訴外人らが換地処分によって取得した土地の取得を希望し、右土地が調整地として処分されるにあたって入札申出もして、取得の意思を客観的にも明らかにしているもので、訴外人らに対してされた換地処分の取消しを求める法律上の利益があり、その利益は、単なる経済上の利益にとどまらない。

(被告の主張)

原告西尾要は、第三者である訴外人らに対してされた換地処分の取消しを求める利益を有しない。原告西尾要の主張する事由は、せいぜい経済上の希望的な利益にすぎず、行政事件訴訟法九条の法律上の利益とはいえない。

三  本案についての争点

1  従前地の地積の認定、換地割当などに関する違法について

(一) 換地処分漏れ

(原告西尾要の主張)

原告西尾要の従前地五二〇一番一(以下、別表に記載のある従前地、換地、一時利用地については、それぞれ地番、仮地番のみをもって表すものとする。)は、その一部が国道一五五号線の道路用地として買収されたにすぎないのに、被告は一筆すべてが買収されたとして、本件換地処分の従前地に含めない。

(被告の主張)

五二〇一番一は、すべて建設省に買収された。

(二) 実測面積によらない違法

(原告らの主張)

改良区が定めた評価及び換地規程(以下「改良区評価規程」という。)二条によれば、従前地地積は、昭和五三年九月二六日を基準日として、基準日現在の登記簿地積で固定するが、換地委員会の同意を得て変更したものを除くとされている。

しかし、改良区は、実測面積による地積の更正を一切認めない。すべて固定方式で処理をし、例外を認めないというのであればともかく、実際は、基準日以降に変更された地積を基準地積とする取扱いを認めている例があり、不公平である。高橋石油株式会社所有の小牧市大草字吉原三八八番一の宅地はその例である。

原告西尾要、同梶田冨美子、同西尾かまは、基準日以後において、従前地の一部を、国道一五五号線の新設や八田川の河川改修のために建設省に売り渡しているところ、買収の際の実測により、残地が存在することが判明したから、実測面積による更正が認められなければならない。

改良区が行った評価地積計算書において、買収された土地の登記簿地積から買収された実測面積を引くことができない場合に、当該組合員の総登記簿地積から総買収実測面積を引くことで帳尻合わせをしている。原告西尾要については五二〇一番一、三一九番一、原告梶田冨美子については三九三六番一、原告西尾かまについては九九三番一、九九三番五について、そのような処理がなされている。

(被告の主張)

本件事業は、被告が昭和五四年に定めた「換地及び評価基準、清算方式」(乙二、以下「被告評価基準」という。)に従い進められてきたところ、被告評価基準においては、「換地交付の基準とする従前地の地積は、本土地改良事業確定の日の登記簿地積とする。」とされている。なお、高橋石油株式会社所有地など、事業開始後に地区編入されている土地については、例外的に、編入時の地積を従前地地積としているが、編入後に地積の変更を認めたことはない。

(三) 買収された土地についての換地指定漏れがある。

(原告落合外一の主張)

原告落合外一が、四三番、四四番三、三二九一番一、五一三五番一の各土地の一部を八田川の河川改修のために売り渡すにあたって、愛知県土木河川課との間で、買収分については、代金ではなく、換地を割り当てることによって精算することが合意されていたから、被告は、買収前の土地面積に応じて換地しなければならない。ところが、買収分に相当する面積の土地の換地は受けていないし、金銭で精算を受けてもいない。

(被告の主張)

買収された分は、従前地から除かれるので、換地を指定できない。

(四) 仮換地相当の換地の指定がない。

(原告西尾かまの主張)

仮換地の段階では、実際に換地を受けた土地のほか、これに隣接した土地も併せて仮換地指定を受けていたところ、原告西尾かまの居宅が隣地にはみ出ていたため、右はみ出し土地と右隣接土地とをいったん交換することになった。しかし、交換比率があまりに不均衡のため、この話を取りやめにし、改良区もこれを了承した。ところがその後、改良区は右隣接土地を調整地として売却処分し、さらに右はみ出し土地も隣地所有者に換地指定されたので、結局、原告西尾かまは、仮換地を受けた土地について換地を受けていない。

(被告の主張)

不知。

(五) 換地地積の合意に反する処分がなされている。

(原告落合良一の主張)

原告落合良一と工区長西尾明夫との間で、同原告に対する換地面積を八四八平方メートルとする合意がされたが、工区長がこれを反古にしたため、一〇・一平方メートルを調整地から取得したにもかかわらず(したがって、換地面積は八五八・一平方メートルとなるはずであった。)、八五〇平方メートルの換地しか受けていない。つまり、合意した部分について、八・一平方メートルの換地面積が不足していることになる。

(被告の主張)

不知。

(六) 対象外の土地が含まれている。

(原告白石勝美の主張)

従前地の内、定根洞の土地は、農免道路用地として既に買収済みの土地で、本件事業とは全く関係のない土地である。これらの土地が買収済みであるにもかかわらず、登記が未了であったため、本件も一挙に解決しようとして、換地会議の際に改良区の中に追加して入れたもので、ほ場整備の本来対象外の土地が、換地対象となっており違法である。

(被告の主張)

右各土地は、事業計画変更手続(平成五年四月二八日変更計画確定)により、地区内の土地となったものであり、原告白石勝美が所有権を有していたものである。

2  従前地、換地の評価の違法について

(一) 評価方法、評価内容について

(被告の主張)

原告らの従前地の評価点数(減点数)は、別表「筆別評価内訳表」欄記載のとおりである。

従前地の評価にあたっては、改良区の「上流」「下流」「深洞」の各集落からそれぞれ評価委員一名を出し、三人で一組となって、現地において現実に観察して意見集約し、採点する方法を採ることにより、評価の適正を保持している。土地の地味等や形状の評価については、現実に観察して評価した。

形状の評価は団地ごとに行われているところ、被告評価基準において、形状は「団地」で評価するとされているし、実際に耕作する際の区切り(耕作単位)である団地により評価することには合理性がある。

広狭の評価については、枚数で行われているところ、被告評価基準において、広狭は「枚数」で評価するとされているし、実際に耕作する際の区切り(耕作単位)である枚数によることは合理性がある。広狭の前提となる枚数の確認は、昭和五三年ころの資料によっており、問題はない。

通作距離について、原告らは、計画道路を考慮しないことは不合理であると主張するが、評価の基準時において計画にすぎなかった道路を、通作距離の算定に考慮することはできない。

原告らは、道路加算として右計画道路を考慮している例があり不公平と主張するが、被告は、道路加算という評価基準は採っていないから、右主張は失当である。

(原告らの主張)

荒地、湧水、砂利層、砂地、地味、田面、乾湿の評価については、規程上、評価委員が三人一組になって現地評価をすることになっているが、地域によってはそれすら行われていない。

右評価項目以外の、高低差や広狭等の評価について、被告は、有限会社安藤調査設計事務所(以下「安藤事務所」という。)に全面的に委任し、評価委員がこれにかかわることはなく、結果についての検討や承認も行われていない。高低差は、性質上図上で確認することは不可能であるにもかかわらず、被告は、現地での確認をしていない。

被告は、広狭の評価は枚数によっていると主張するが、現地で確認をしているものではなく、古い資料により、図上確認をしているにすぎない。

個々の従前地の地味等について、原告らが不当な評価であると主張するところは、別表「筆別評価内訳表」中の網掛け部分である。

被告評価基準によれば、形状は団地で、広狭は枚数で評価するとなっているが、右区分に全く合理性はなく、換地処分は、従前地一筆ごとに評価が加えられることからしても、広狭の評価も団地あるいは筆ごとになされるべきである。

基準日においては、国道一五五号線の建設計画も策定され、国道一五五号線の道路用地買収と本件の換地は同時並行的に進められていたから、従前地の土地の通作距離の評価にあたっては、換地処分のあった時点における状況を前提として従前地の評価をすべきであるし、地区外の道路との関係も考慮すべきである。換地については計画道路を考慮するのに、従前地については一切度外視することはアンバランスであって、不合理である。

また、通作距離の評価にあたって計画道路を考慮しないことは、改良区評価規程別表4の「都計道路(新設線)の従前地については、既得権として上記基準の二分の一を認める。」という定めとも、明白に矛盾している。

しかも、改良区の役員の従前地の評価にあたって、道路加算として国道一五五号線に接していることを考慮している例があり、一貫しない不公平な評価がなされている。

(二) 換地の評価について

(被告の主張)

(1)  原告西尾治郎は、自己に対してされた換地の評価が不当だと主張するが、被告は、原告西尾治郎が不当だと主張する「正面道路」、「側面道路」という評価基準は採っていないのであるから、被告の採らない評価方法を前提とする右主張には理由がない。

(2)  原告白石勝美の換地については、接続する県道の歩道から大型耕作機械を入れることができ、多少高低差はあるものの進入に支障はなく、ガードレールについても、進入しやすいように進入用部分が切れており、耕作のための進入に不都合はない。したがって、右換地の評価は適正である。なお、同原告が不当であると主張する、県道沿いであることを理由とする高い評価は行っていない。

(原告西尾治郎、同白石勝美の主張)

(1)  原告西尾治郎に換地指定された土地は、三メートル幅の道路と六メートル幅の道路に挾まれているところ、広い道路を正面道路として高い評価がされている。しかし、同じような道路の状況、土地の道路との位置関係、土地の形状にある工区長西尾明夫の土地については、広い道路を側面道路として、換地の価値を不当に低く評価して換地面積を増やすという操作がしてある。仮に、工区長西尾明夫の換地のような評価が相当であるのなら、原告西尾治郎の換地に対しても同様の評価がされるべきである。

(2)  土地改良は、農用地の集団化により、農業経営を近代化することが目的であり、土地評価にあたってもその点が考慮されなければならない。

原告白石勝美の換地については、県道に接して高い評価が加えられているが、右土地の現状は、車道の外、田畑側に歩道があり、さらにガードレールがあり、県道と土地との間も高低差があるというものである。

このような状況では大型耕作機械も入らず、トラック等も路上の違法駐車をしなければ作業ができない。このような土地改良の目的に全く沿わない道路に接しているからといって、高い評価をすることは妥当でない。被告は、県道沿いということで高い評価をしていないというが、改良区評価規程によれば道路加算の対象とされている。

(三) 地役権の評価について

(被告の主張)

(1)  原告稲垣勝利が地役権の負担を受けている土地については、換地の地積の増加により、地役権存在による換地の評価減を考慮した。

(2)  原告落合治夫が地役権の負担を受けている土地については、従前地の合計地積より換地の合計地積を増加させることにより、地役権存在による換地の評価減を考慮した。

(原告稲垣勝利、同落合治夫の主張)

(1)  原告稲垣勝利が換地として取得した土地のうち、地役権の負担があるものについては、これに対応する従前地にも、同じく地役権の負担があるが、地役権の負担を負う部分の面積は、換地の方が多い。したがって、地役権による評価減を加えるのなら、換地の方が面積が増えてしかるべきであるところ、逆に換地の方が面積が減っており不合理である。

(2)  原告落合治夫の従前地のうち、地役権の設定がされている土地については、設定を受けている一九〇平方メートル分が評価減を受けている。

しかし、右土地については、他の土地と合わせて一〇三二平方メートルの一筆の換地が指定されているところ、右換地の全体に地役権の負担がかかるにもかかわらず、三一〇平方メートルしか評価減を受けておらず(本来五一六平方メートルが評価減を受けるべきである。)、不合理である。

3  本件換地処分の減歩率は公平か。

(被告の主張)

原告らは、地積だけを比較して、減歩率が不公平であると主張しているが、土地改良法(以下「法」という。)五三条一項二号が要件としているのは、「用途、地積、土性、水利、傾斜、温度、その他の自然条件及び利用条件を総合的に勘案して、当該換地が従前の土地に照応していること。」であって、地積のみの項目で照応することを要件としているものではない。

また、同条同項三号の省令で定めるところにより算定した従前地の「地積」は、換地交付基準地積であるところ、換地交付基準地積より見ても、平均換地率は、九五・二三パーセントであるので、平均減歩率は四・七七パーセントであって、やはり原告らの減歩率が不合理に高率であるとはいえない。

(原告らの主張)

照応の原則を定めた法五三条一項二号は、その考慮事項として地積を掲げており、これは同三号にいう換地交付率による修正を加えたものと異なり、換地と従前地を直接比較対照して、総合評価として概ね同等といえるかどうかという観点から見たものである。こうした観点から見ると、原告らの減歩率は、原告西尾要は一八・七パーセント、原告西尾治郎は一九・五四パーセント、原告西尾修は一六・二パーセント、原告西尾すずは一七・五四パーセント、原告梶田冨美子は一六・八パーセント、原告白石勝美は一六・三九パーセントであって、平均減歩率九パーセントに比べ、極めて高いものとなっている。特に、工区長西尾明夫の減歩率六・九九パーセントとの間には、大きな差があり、極めて不公平である。

法五三条一項三号の換地交付率による修正を加えた減歩率からしても、原告西尾治郎は一五・五パーセント、原告西尾すずは一八・二パーセント、原告梶田冨美子は一二・七パーセントであって、極めて高率である。

4  土地改良法の目的(農業経営の集団化、効率化)に沿った換地がされているか。

(被告の主張)

(一) 原告西尾要の従前地は一四団地であったが、四団地に集団化されているのであって、団地化が行われている。

(二) 原告落合君江が主張するような、農業の集団化、効率化を図るという法の目的に反する換地はされていない。

(三) 原告落合四十二に対する換地は、同原告が、被告が仮換地として指定を受けた土地を、三角地であり嫌だから変更してほしいと希望したため、別の土地を指定してされたものであるから、違法とはならない。

(四) 原告落合進及び同落合小夜子に対する換地については、四団地から三団地への集団化が行われている。同原告らが指摘する換地については、原案作成時に所有者であった落合ゆみ(原告落合小夜子の母)との話合いで、位置を決めたものであって、違法とはならない。

(原告らの主張)

(一) 換地を行うにあたっては、現地付近での換地が原則であり、甚だしい飛換地をするにあたっては合理性が必要である。しかし、原告西尾要の土地については、換地による集約、団地化にあたって、近隣にふさわしい従前地があるにもかかわらず、わざわざ遠隔の土地を従前地としたり、従前地が団地であるにもかかわらず、これを換地にあたっては二分するなど、恣意的、違法な運用がなされている。

(二) 原告落合君江に換地割当となった換地は、狭隘であったり、隣接換地との間に水路があったり、高低差があったり、田に入るための間口が狭かったりして、機械耕作は不可能で、現在耕作ができない状態にある。このような狭隘な土地の分離換地指定は、農業経営の集団化、効率化という土地改良(ほ場整備)の目的に反する違法な換地指定である。

(三) 原告落合四十二の所有地について、狭小でおよそ農業経営の集団化という目的に沿わない調整地を設けて、仮換地として指定を受けた土地の面積を減ずることは、農業経営の合理化、農地の団地化という土地改良の目的に反するものであり、農地の集団化という観点からも、また本人の希望ということからも許されないものというべきである。被告は、原告落合四十二の希望によって一部変更したというが、そのようなことはない。

(四) 原告落合進及び同落合小夜子について、わずか一三坪程度の土地が換地されたが、機械耕作もできず、他の換地と一体化して指定がなされるべきであり、このような細切れの換地指定は、農地の集団化を図る土地改良法の目的に反する違法な指定である。

5  調整地の処分は適法か

(被告の主張)

(一) 県営土地改良事業としては、調整地の処分をしていないから、右処分は、被告の本件換地処分とは関連がなく、これを違法とするものではない。

(二) 本件において、調整地については、第一に全組合員に対して三パーセントの還元をし、第二に一〇〇平方メートル以下の調整地について隣地買いを行い、第三に増換地希望により公平に処理したのであるから、不公平はない。

(原告らの主張)

(一) 本件事業は、県営事業であって、事業費捻出のための余剰地をもつ必要はないばかりか、法は、改良区が余剰地について所有権を取得することを許容していない。本件において、調整地の処分は、表面上は換地処分という形式を採っているものの、その実質は、従前地を改良区が買い上げ、入札者に売却するということにほかならず、違法である。

(二) 調整地を設けなければ、原告らに換地として割り当てられる土地の面積は当然増え、原告らに対する本件換地処分に影響を与えるものであり、調整地の処分の違法性は、原告らに対する本件換地処分をも違法化するものである。

(三) 調整地の処分に際し、原告西尾要のような適当な入札者がありながら、入札実施方法として明示された入札資格も農業資格もない者に、あえて農地が処分されている。これは、不公正、不平等である上、農地法の趣旨をも潜脱する違法な取扱いであり、本件換地処分自体の瑕疵ともなるものである。

6  本件換地処分は、機に熟した段階でされたか。

(原告らの主張)

換地処分は、本来、換地についての所有者がすべて確定した上で行われるべきであるが、本件においては、調整地等の処分で入札者がいなかったものについては、改良区の役員を便宜上の名義人として、換地処分を行っている。

第三当裁判所の判断

一  本案前の抗弁について

処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができるところ(行政事件訴訟法九条)、処分は、各人ごとに独立して行われているものであるから、第三者に対してされた換地処分が取り消されても、原則として、これによって原告西尾要に対する本件換地処分が影響を受けるわけではない。したがって、同原告に、訴外人に対してされた換地処分の取消しを求める法律上の利益はないものである。

原告西尾要は、訴外人らが換地処分によって取得した土地の取得を希望し、入札申出もしていたことを理由に、法律上の利益があると主張するが、訴外人らに対する右換地処分が取り消されたからといって、同原告が直ちに右土地を取得できることにはならないから、右の点をもって、同原告が法律上の利益を有するということはできない。

結局、原告西尾要の主張のうち、訴外人らに対する換地処分の取消しを求める訴えは、却下されるべきものである。

二  本件事業の内容とその経過

1  改良区は、被告から、本件工区に関する換地業務の委託を受け(昭和六一年度分について甲六七)、昭和五三年一一月三〇日、右業務の全部及び確定測量業務を、二二二六万八〇〇〇円で、安藤事務所に委託した(乙一一、二一)。

2  改良区では、改良区評価規程が策定され、これに従って従前地の評価作業をすることとされた。

(一) 従前地の地積については、改良区評価規程二条において、「換地設計の基準地積は、昭和五三年九月二六日現在の登記簿登載の地積とする。ただし、地目は現況によるものとし、又土地登記簿の表示に誤りを発見した時は、換地委員会の議を経て決定する。2前項の期日以降において土地表示の変更登記をしたものについては、これを適用しないものとする。ただし、換地委員会の同意を経て変更したものを除く。」とされ、原則として登記簿地積によることとされ、例外的に、換地委員会の同意や議を経てのみ登記簿地積以外により得ることになっていた。

(二) 土地改良法上、農地は農業経営の観点から評価するものとされており、農地としての自然条件(荒地、湧水、砂利層、砂地粘土、非農地、電柱の有無や畦畔面積、日照などの特殊地かどうか、地力、灌漑排水)、経済条件(広狭、形状、達観、通作距離)のみが評価項目とされている。

改良区評価規程においても、このような評価項目によって農業評価をすることとされており、各項目ごとにAないしDもしくはEの四ないし五段階で評点を付けて、それぞれの評点ごとに定められた減点数を合計し、一点当たり〇・五パーセントの割合で地積をマイナスして、評価地積を算出するという方法がとられている。

なお、広狭は枚数、形状は団地で評価するものとされている。

(三) しかしながら、本件工区の辺りでは、宅地開発も進んでいて、将来における宅地転用をにらんだ資産価値としての評価を加味しないでは、組合員の納得を得られない状況であったので、改良区評価規程では、前記農業評価のほかに、従前地についての道路加算として、正面道路に接する土地については、道路に接する間口の長さに道路の巾員の二分の一を乗じた面積を加算する等して評価地積を算出することなどが定められている。

また、換地については、地先負担として、正面道路に接する土地については、道路に接する間口の長さに道路の巾員の二分の一を乗じた面積を配分地積から減算すること、不整形地、標準地(一〇〇〇平方メートル)に満たない土地、道路より高低又は法高さのある土地、奥行きの少ない土地などについては負担地積を軽減すること、高圧線下の土地については、権利制限登記の有無、権利の内容に従って減算する従前地の地積の割合と加算する換地の地積が定められている。

また、集団化のために飛換地になる場合の評価差の均衡を図るための等級差による加算、減算をすることが規定されていたが、その割合は換地処分の段階で決定するものとされていた。

3  本件工区は、北から順に上流工区、深洞工区、下流工区の三工区に分けられ、各工区ごとにそれぞれ評価委員が選任され、従前地の調査と自然条件などについての評価が行われた。従前地の広狭、形状、道路加算などは、図面に基づいて安藤事務所において評価した。

4  評価作業を受けて、安藤事務所において、換地設計作業が進められたが、安藤事務所は、<1>事業費用を捻出する必要、<2>八田川の河川改修のための用地を共同減歩により捻出するため、買収用地に代わる換地用の土地を確保する必要、<3>本件工区は地域が広く、資産価値の大きく異なる土地が存在し、換地に際し等級差評価を行うことが必要であったが、変動時期のため後に等級差の内容を決定するものとされたため、その際に調整できるようにする必要、<4>本件事業では、全体の確定測量を待たず、工事が完了したところから順番に換地発表をしていくため、初めから全体の減歩率を決めていかなければならなかったことなどの理由から、換地の調整などに備えて通常設けるより相当広い余裕地を設けることが必要であると考え、本件工区内の土地の約五パーセントを調整地とすることとし、評価地積に対する交付率を〇・九四八として、工事を進めた。

5  このようにしてまず、昭和五四年には、上流工区、深洞工区について換地原案が作成され、工事が始められ、昭和五九年には下流工区についても換地原案が作成され、工事が始められた。そして、昭和六一年には全工区の工事が完了した。換地原案が作成された際、改良区から仮換地指定が組合員に通知され、工事の進展に従い、愛知県から一時利用地の指定がなされた。なお、昭和五九年四月、三工区が合併し、本件工区一本になった。

6  平成三年七月一日、改良区は、従前地と指定済みの一時利用地の評価(改良区評価規程による)について総点検し、評価基準の適用の誤りや、事業途中に国道一五五号線の新設や八田川の河川改修のために買収された土地の関係について整理して、指定済みの一時利用地の過不足調整を行った(証人安藤俊人、甲三の一、乙一二)。また、その際、例えば、上流にあった従前地について下流に換地が定められるなど、上流、深洞、下流の各工区を越えて換地がされた土地について、等級差を考慮して、工区が一つ異なるごとに五パーセントの面積を増減することとした。

なお、国道一五五号線の新設や八田川の河川改修のための用地買収は、買収土地を実測した上、従前地の所有者から買収することとされたが、従前地の所有者の中には、代金より土地を希望する者がおり、そのような場合には、改良区が買収代金を取得し、買収された土地分も従前地としてみなして換地を指定することとした。

ところで、一部が用地買収された土地について、改良区は、土地の残部の面積は、登記簿地積から実測面積分を差し引いた面積であるとみなして、一時利用地の指定をしてきたが、登記簿地積より買収された面積が大きい土地については、面積ゼロとして一時利用地指定してきたが、過不足調整にあたり、基準時における登記簿地積が基準地積であることからすると、当該組合員の従前地の登記簿地積の合計から買収面積を差し引くのが正当であるとして、そのように調整した。

7  前項記載の一時利用地の過不足調整に先立ち、平成三年一月二〇日には、未指定の調整地の処分について改良区に調整地処分委員会が設けられた。

その検討の結果、改良区は、平成三年一〇月一〇日、評価地積に乗ずる換地交付率を〇・九四八から〇・九七八と三パーセント増やすこととし、新たな換地交付率に従って過不足調整し、新交付率によると配分地積が不足する組合員に対して、同人に対する指定済みの一時利用地の隣地に調整地がある場合は当該調整地を、隣に調整地がない組合員に対しては、希望により、飛地もしくは金銭で精算することとした(乙一三)。

8  平成四年一一月三日、改良区は、残った調整地については、取得を希望する組合員に売却し、増換地とすることとし、一〇〇平方メートル以下の調整地については、希望申出により案分、もしくは隣接者に対して処分すること、調整地のうち一〇〇平方メートルを超えるもの八九筆(合計約二万五〇〇〇平方メートル)については、一平方メートル当たり一万三〇〇〇円以上の価格で取得希望者を募り、複数の組合員から取得の申出があるときは、申出価格の高い方にすることとした(乙一四の一ないし五、乙一五)。右同日、右土地の地積及び位置図の閲覧に関する通知もされている(乙一六)。

平成四年一二月一日、第二回調整地増換地希望者の取りまとめについての通知がされ、調整地のうち、前回の募集で売れ残った土地について、入札による取得希望者が再募集された(乙一七)。この時においても売れ残った土地については、同月二七日に、第三回の入札募集がされている(乙一八)。

なお、最初は、従前地評価面積の二〇パーセントを限度として取得できるとして制限したが、希望者が少ないため、最終的には五〇パーセントまで取得可能とした。右三回にわたる調整地の売却により、改良区が得た金銭は、約五億円である。

9  第三回の入札募集においても、取得希望者がいなかった小牧市大草東一九七及び一九八の土地(合計面積九一八・七一平方メートル)については、小牧市が買収を希望したため、実際の買収までの便宜的措置として、本件工区の理事である波多野亘名義にされている(甲八〇の一と二。なお、金銭の支払はされていない。)。

10  売却により改良区が得た金銭は、事業費用に充てられたほかは、約三億円が、従前地一平方メートル当たり二〇〇円の割合で全組合員に還元されたほか、組合員の温泉一泊旅行(甲七一によれば、右旅行費用は、一一五四万一八七二円であり、欠席者には二万円が支払われた。)などに費消された。

11  このようにして、調整地処分が終わり、換地計画が決定できる段階になったので、安藤事務所は、改良区評価規程による従前地と換地関係を明らかにした「評価地積計算書」を作成するとともに、土地改良法による換地処分の内容となる被告評価基準に基づく従前地と換地の関係を明らかにした「所有権に関する明細」を作成した。

所有権に関する明細は、土地改良法においては、農業経営の観点からのみ評価するものとされていることを考慮して作成された被告評価基準(乙二)に適合するように、農地としての自然条件(荒地、湧水、砂利層、砂地粘土、非農地、電柱の有無や畦畔面積、日照などの特殊地かどうか、地力、灌漑排水)、経済条件(広狭、形状、達観、通作距離)による評価の結果は、別紙「筆別評価内訳表」欄記載のとおりであるとし、各評点に応じた等位による価格を地積に乗じて、価格を算定したとされ、従前地の換地交付基準地積と換地の価格との過不足額に応じて清算金を徴収または支払う旨記載されている。

評価地積計算書は、改良区評価規程による従前地の評価、評価地積に換地交付率を乗じた基準地積の算出、これに対する一時利用地の配分地積とその評価地積、精算の内容となる過不足地積の関係を明らかにしたものであり、等級差の認定、国道一五五号線の新設や八田川の河川改修のための用地買収関係、三パーセントの割戻しや調整地処分の結果がすべて記載されている。

そして、一時利用地の評価地積と所有権に関する明細記載の換地の地積が対応する結果、評価地積計算書の評価の結果に基づいて換地が指定されたことが理解できることになっており、実際の清算金額が評価地積計算書の過不足地積に従ってなされることが明らかにされている。

12  平成五年三月一一日開催された改良区による換地予備会議(地主総会)により、右換地計画書が確認された。右会議の開催通知には、評価地積計算書と所有権に関する明細書の関係や、清算の趣旨についての説明文書が添付されていた。

13  その後、平成五年三月二六日、換地会議が開催されて換地計画が確定し、平成六年三月二三日、本件換地処分がなされた。

本件換地処分は、右換地会議で承認された換地計画を内容とするものであり、別表「原告らに対する処分」中の「所有権に関する明細書の従前地」に対して「換地」が指定され、同表中の「清算金」欄記載のとおり、徴収額が徴収されるか、支払額が支払われることを(実際は、そのとおりに清算金が徴収されたり、支払われたりはしない。)、内容とするものということができる。

しかしながら、以上の認定によれば、換地業務の実施の委託を受けた改良区は、委託の趣旨に従い、独自の計算で、従前地を評価し、これに照応するものとして換地を配分し、換地の過不足の精算をさせることとしているが、それにもかかわらず、本件換地処分は、改良区のなした従前地とこれに対する換地の指定の関係を、そのまま採用している。このような関係からすると、改良区のなした換地の配分と配分の過不足調整の措置は、本件換地処分の実質ともいうべきものであり、これらが、土地改良法に照らして違法と評価すべきものであるときは、本件換地処分自体も違法というべきである。

三  争点1(従前地の地積の認定、換地割当などに関する違法について)について

1  換地処分漏れ

証拠(甲八七)によると、昭和六〇年八月二日、国道一五五線の道路用地の買収を目的として、原告西尾要と愛知県土地開発公社、訴外伊藤ほか一名との間で土地の売買契約が締結されたが、その内容は、次のとおりである。

(一) 原告西尾要は、その所有に係る従前地五二〇〇番のうち実測面積八六・〇二平方メートル、従前地五二〇一番二のうち実測面積四五・二六平方メートル、五二〇一番一については実測面積四六四・四一平方メートルを、愛知県土地開発公社に売却する。

(二) 訴外伊藤ほか一名は、原告西尾要が買収に応ずる対償として、角田一〇二、一〇三、一〇五を原告西尾要に譲渡する。

(三) 愛知県土地開発公社は、買収代金を訴外伊藤ほか一名に支払う。

右契約により、五二〇一番一は、そのすべてが建設省に所有権移転された。

ところで、契約に先立つ実測の結果(甲五七)によると、五二〇一番一は、道路敷地にあたる前記四六四・四一平方メートルの部分のほかに五六・〇九平方メートルの残地があることとされているが、登記簿の記載によれば、前記売買を原因として一筆全部が建設省に所有権移転されているから(甲八六)、原告西尾要に残地の所有権が留保されたということはできない。右に反する原告西尾要の主張(甲八五、八八、九四)は採用できない。

よって、原告西尾要の従前地に、五二〇一番一が含まれていないことをもって、換地漏れがあるということはできない。

2  実測面積によらない違法

(一) 被告の換地計画においては、基準地積は「本件事業確定の日」(乙二六によると昭和五三年六月二日である。)の登記簿地積とするものとされているが、その後に国道一五五線の新設や八田川の河川改修のために買収されるなどして、地積更正登記がされた土地については、更正された地積に基づく面積を従前地の地積として、本件換地処分が行われたこととされている。

原告らのうち、従前地について地積更正登記がなされた者は、原告西尾要、同梶田冨美子、同西尾かまの三名である。

(1)  原告西尾要については、三一九番一の地積一六平方メートルが五八平方メートル増加する内容の地積更正がなされた上、分筆された三一九番五と六の合計二八・六五平方メートルが買収され、残りの土地が地積が二四平方メートルの三一九番一と同二〇平方メートルの三一九番四が残った。

(2)  原告梶田冨美子については、三九三六番一の地積九・九二平方メートルが一四三・〇八平方メートル増加する内容の地積更正がなされた後、八田川の河川改修のために一二四・二二平方メートルが買収されたため、七八平方メートルとなった。

(3)  原告西尾かまについては、地積が一七平方メートルの九九三番一と地積が五三平方メートルの九九三番五が合計して八九平方メートル増加された内容で地積更正された後、八田川の河川改修のために九九三番一が六四・八一平方メートル、九九三番五が七五・一九平方メートル買収され、九九三番一の地積は一一平方メートル、九九三番五の地積は四・四八平方メートルとなった。

(二) (一)のとおり、(1) ないし(3) の土地については、地積更正の結果に基づいた面積を従前地の地積として、本件換地処分がなされたものとされている。

しかしながら、前記二で認定したところによれば、実際の換地の配分作業は、改良区が行い、その結果が、そのまま本件換地処分に引き継がれているところ、改良区は、改良区評価規程に従って、配分作業を行ったが、右改良区評価規程二条によれば、従前地の地積は、原則として登記簿地積によるが、換地委員会の同意を経て変更したものは、変更した登記簿地積により得ることになっているにもかかわらず、実際には、変更した地積によって配分を受けた者はなく、地積更正がなされた者についても、基準日の登記簿地積によって、換地の配分がなされた。

換地の配分地積の決定方法は、まず、従前地の登記簿地積から改良区評価規程による評価に従って、面積を増減して、評価地積を算定し、右評価地積に換地交付率(当初は〇・九四八、その後〇・九七八に増加させた。)を乗じた地積を基準地積とし、これに相当する換地を配分し、過不足は金銭で調整するというものであった。

そして、国道一五五線の新設や八田川の河川改修のために、事業の途中において買収された土地については、組合員ごとに、買収される前の登記簿地積(及びこれに評価により加算減算した面積)の合計から、買収された面積(及びその面積分にかかる評価による加算減算後の面積)の合計を差し引いた面積をもって、評価地積とし、これに換地交付率を乗じて基準地積を算出することとされた。

(三) なお、原告らのうちには、国道一五五線の新設と八田川の河川改修のために従前地の一部が買収された者があるが、前記(一)の(1) ないし(3) 以外は、登記簿地積から買収面積を引いた面積が従前地とされている。原告らは、これら一部が買収された土地についても、登記簿地積から買収面積を引いた面積以上に実測面積があるとして、実測面積によらないことを違法と主張するようであるが、地積更正登記がされた前記(一)の(1) ないし(3) 以外には、一部が買収された後の土地の実測面積について、具体的な主張はなく、その証拠もない。よって、実測面積によらないことの違法の主張は、前記(一)の(1) ないし(3) について、検討する。

(四) 改良区評価規程二条によれば、換地委員会が同意した場合は、地積更正に基づいて基準地積が算定されるところ、右規程には、どのような場合において同意すべきかについて何ら規定するところがない。しかしながら、従前地の地積の認定は、配分地積の多寡に直結する事項であり、個人の財産権に関わることであるから、変更された地積によることについての同意、不同意が、換地委員会の裁量に全面的に委ねられているということはできない。

そこで、このような規程がなされた事情について検討するに、証人西尾明夫は証言において、土地改良事業の対象事業となる農地については、多かれ少なかれ面積に縄延びがあるから、ある組合員の従前地の地積の変更を認めることは、縄延びを主張しない他の組合員との関係で、かえって不公平になると述べている。農地に縄延びが見られることは経験的に明らかであり、本件においても、前記1及び2の(一)の(1) ないし(3) のように、国道一五五線の新設や八田川の河川改修のために土地が買収された際の実測によって、縄延びしていたことが明らかになった。大部分の農地に多少なりとも縄延びがあることを前提とすれば、地積更正がされたからといって、必ず更正された地積に基づいて換地を配分すべきであるとまでいえない。

しかしながら、大部分の土地にあると想定される縄延びの割合を大きく超えて、縄延びが認められる場合についてまで、更正された結果によらないことは、財産権を侵害するおそれがあるものとして許されないものといわざるを得ない。

(五) 証拠(乙二)によれば、本件事業においては、従前地の登記簿地積の合計は一四九万三七五四・二五平方メートルであり、換地地積の合計は一五六万二四四六・六二平方メートルであるから、縄延び率は四・六パーセント前後と想定される。よって、実測の結果、縄延び率が四・六パーセントを大きく上回る場合においては、地積更正された面積に基づいて配分地積を算定する必要があるというべきである。

これを前記(一)の(1) ないし(3) の縄伸び率についてみるに、いずれも前記四・六パーセントを大幅に超えるものであるから、これらの土地について、地積更正された結果に基づかない換地の配分は、照応性に反するものとして違法である。

(六) 前記二によると、改良区の換地の配分作業においては、各組合員ごとに、従前地の登記簿地積の合計から買収面積の合計を差し引いた面積について、換地の配分が算定されているから、個々の土地を見た場合、登記簿地積が買収面積より小さい土地については、その足りない分が、その組合員の有する他の土地の面積から差し引かれるという結果になっており、前記1及び2の(一)の(1) ないし(3) は、いずれもそのような計算結果となっている。

登記簿地積が買収面積より小さいというのは、当該土地について縄延びがあったということであり、せいぜい、当該土地の面積をゼロにするのが相当であり、これを超えて、他の土地からこれを差し引く合理的理由は見あたらない。

ましてや、原告西尾要の五二〇一番一については、一筆全部が買収されたのであるから、その計算にあたっては、五二〇一番一は最初から無かったものとして扱うのが相当であり、買収面積との差を他の土地から差し引くべきではない。

以上のような点からも、原告西尾要、同梶田冨美子、同西尾すずに対する本件処分は、照応性に違反する事由があるといわざるを得ない。

3  買収された土地についての換地指定漏れについて

原告落合外一に関する評価地積計算書と本件換地処分の内容によると、原告落合外一の四筆の所有地それぞれの一部が八田川の河川改修のために買収され、本件換地処分においては、買収された後の残地を従前地として、換地が指定されたこととされている。しかしながら、評価地積計算書によると、右四筆については登記簿地積そのものから基準地積が算出されており、買収分は引かれていない(八田川の河川改修で買収された分として差し引かれているのは、右四筆以外の土地である。)。そして、右基準地積に基づいて、換地合計二九三九・四五平方メートルの換地が割り当てられることとされており、本件換地処分においても同一の地積の換地が指定されている。右事実からすると、買収の際、改良区との間で、原告落合外一主張のような合意がなされたことが推測される。

以上によると、本件換地処分の形式上、買収された部分を従前地から除外してはいるが、実質においてはこれを含んで処分がなされていると認められ、原告落合外一が不服を述べるのはあたらない。

なお、証拠(証人安藤俊人)によると、本件事業においては、当初から同時期に施工されることが分かっていた八田川の河川改修のための用地については、共同減歩により捻出することとされており、その後に具体化した国道一五五線新設のための道路用地についても同様に共同減歩により捻出することとされたが、金銭買収を希望する組合員については共同減歩の対象としないことは当然のこととされていた。このように本件事業以外の事業のための用地を共同減歩により捻出することは、土地改良法上問題がある。しかしながら、原告落合外一はそのような違法な合意をした当事者であり、違法を主張することは許されない。

4  仮換地相当の換地の指定がない

原告西尾かまの主張は、仮換地を受けた土地について換地を受けていないということに尽きるところ、換地は従前地に対して指定されるものであって、改良区が指定した仮換地、もしくは愛知県が指定した一時利用地のとおりに換地を指定すべきものではないから、同原告の主張は理由がない。

5  換地地積の合意に反する処分について

甲四一によると、一時利用地仮地番一三-一の八一三平方メートルに三パーセント割戻分三五平方メートルを加えて八四八平方メートルの換地とすることを工区長西尾明夫が原告落合良一に約束した事実が認められる。

そして、同原告に対する評価地積計算書(甲三六)によると、従前同原告に対しては一時利用地として合計三一三六平方メートルの土地が指定されていたところ、三パーセント割戻しをすると六七平方メートル不足することになるので、仮地番一三-一の増加分として配分地積三二・二八平方メートル、評価後地積二八・六九平方メートル、仮地番四九-一-四の配分地積三四・一〇、評価後の地積三五・六九平方メートルを配分することとしたこと、これらと従前からの一時利用地一三-一の評価後地積七八四・六七平方メートルの合計が八四九・〇五平方メートルになる。右計算結果からすると、工区長西尾明夫が確保することを約束したのは、換地の配分地積ではなく、評価後の地積であると解するのが相当である。

しかしながら、証拠(乙三〇、三一)によると、前記評価地積計算書(甲三六)は、最終的なものではなく、最終的に決定された評価地積計算書(乙三〇)によると、同原告については、換地となるべき土地として合計二九八三平方メートルが指定されることになっており、一〇・一〇平方メートルについては調整地取得として代金を支払うこととされている。すなわち、同原告についての三パーセント割戻分として、仮地番一三-一に配分地積六六・一八平方メートル、評価後の地積五五・九四平方メートルを加えることとし、更に一三-一の隣地買いとして配分地積一一・八〇平方メートル、評価後の地積一〇・一〇平方メートルを追加したものである。そして、同原告は、右隣地の購入代金を支払っている(甲九〇)。

同原告に対する本件換地処分につき、同原告主張のような違法は認められない。

6  対象外の土地が含まれている

弁論の全趣旨によると、原告白石勝美に対する本件換地処分において、農免道路として既に買収済みの土地で、本件事業とは全く関係のない土地であり、現に仮換地、一時利用指定の時には換地対象外とされていた定根洞三八九一番二、三八七六番三の公衆用道路が、従前地にあげられていること、本件換地処分において従前地にあげられたのは、この土地が買収済みであるにもかかわらず、登記が未了であったため、これを解決しようとして、換地会議の際に改良区の中に追加したものであることが認められる。このような便宜的措置は違法ではある。しかしながら、同原告についての評価地積計算書(甲三一)によると、右土地は、同原告に対する配分地積の計算上、全く考慮されておらず、右便宜的措置は、同原告の権利義務には何ら影響しないので、右違法は同原告に対する本件換地処分の違法理由とはならない。

四  争点2(従前地、換地の評価の違法について)について

1  被告は、従前地、換地は、改良区の「上流」「下流」「深洞」の各集落からそれぞれ選出された評価委員の地質条件などについての現地観察の結果や、安藤事務所による面積の広狭の調査などによって、県評価基準に従った適正な評価がなされており、原告らの従前地、換地の評価点数(減点数)は、別表「筆別評価内訳表」欄のとおりであると主張する。

2  証拠(証人西尾明夫、同安藤俊人)によると、従前地の評価にあたっては、改良区の「上流」「下流」「深洞」の各集落からそれぞれ評価委員一名を出し、三人で一組となって、現地において現実に土地の地味などを観察して意見集約し、採点する方法を採ったこと、土地の広狭や形状については、安藤事務所において航空写真に基づいた地図により判断し評価したことが認められる。

3  ところで、前記二で認定したとおり、本件事業においては、被告評価基準とは別に改良区評価規程があり、改良区評価規程には被告評価基準にない評価の項目があり、また、被告評価基準では評点により等級を決め、等級により決められた評価額を地積に乗じて交付基準額を算定する方法を採っているのに対して、改良区評価規程は評点により一定の割合で面積を増減して評価地積を算定する方法を採っており、同一の評点になったとしても、微妙にその結果は異なる。

証人安藤俊人は、所有権に関する明細の等級の算定根拠となった別表「筆別評価内訳表」は、改良区評価規程に従った評価地積計算書の評価のうち、農業評価のみを取り出したものであり、評価の観点が異なるのみで、いずれの評価も正当であると主張する。

しかしながら、右「筆別評価内訳表」の評価項目欄記載のとおり、原告らの従前地については、被告評価基準のうち、電柱の有無、畦畔面積、達観(宅地化の程度が調査事項とされ、県道、私道や農業道路からの距離によって二点から六点加算されるものである。)の項目については、全く減点が無いとされているにもかかわらず、原告らに関する評価地積計算書によると、ほとんどの土地について、農業評価のほかに、電柱の有無、畦畔面積、達観評価加算が行われている。また、評価地積計算書の農業評価を減点数に換算(一点当たり〇・五パーセントの割合で面積を減らすことから農業評価の面積を従前地の面積で除した数字が減点数となる。)した減点数は、右「筆別評価内訳表」欄記載の点数とは明らかに異なり、右「筆別評価内訳表」の評価には、何らかの操作がなされていることは明らかである。

しかも、評価地積計算書の農業評価の内訳が項目ごとに明確にされていないため、評価地積計算書の農業評価と右「筆別評価内訳表」の評価と、どの項目が同一かさえ明らかにできない。のみならず、前記2で行われた評価の結果が、正当に評価地積計算書に記載されているかも判断できない。

いずれにしても、別表「筆別評価内訳表」が実際に行われた評価に基づいているものとは認められず、本件換地処分が、正当な評価に基づいて行われたということはできない。

4  ところで、前記二記載のとおり、改良区評価規程は、土地改良法上認められる評価方法と異なり、財産評価の観点から、道路加算や道路の地先負担などの負担地積を定め、所在地域の違いによる等級差による調整を図るなどしており、そのような方法によってなされた評価をもって、土地改良法上適正な評価がなされたということはできない。のみならず、評価地積計算書の評価も、実際に行われた評価の内容を明らかにするものではなく、結局、評価地積計算書をもってしても、評価が適正に行われたということはできない。

5  よって、原告らの個々の従前地、換地についての評価についての争点について、判断するまでもなく、本件換地処分は、「土性、水利、傾斜、温度、その他の自然条件及び利用条件」について、照応していることの証明がないといわざるを得ない。

五  争点3(本件換地処分の減歩率は公平か。)について

1  減歩率は、従前地の面積と換地の面積の差が従前地の面積に占める割合で示されるところ、これは、一から従前地の評価率(評価地積を従前地の面積で除した数)に換地交付率を乗じた数を換地評価率(配分地積を換地地積で除した数)で除した数を引いた数字と一致する。

本件事業による平均減歩率は、換地交付率が〇・九四八のときは一二・二六パーセント、三パーセント割り戻した後の〇・九七八のときは、九・四八パーセントである(乙二九)。

原告らは、平均減歩率に比較して、減歩率が多いと主張する。

これに対して、被告は、換地処分後の土地の合計面積一二六万五一〇一・三六平方メートルが従前地の合計面積一三二万八四六八・九八平方メートルに対する割合である九五・二三パーセントを乗じた面積(以下「比例額」という。)と換地面積の差が比例額に占める割合を一から引いた割合と比較すべきであると主張するが、いずれの方法によるかによって、その数字は異なるものの、減歩の割合を示すことは明らかであり、いずれの方法をもって論ずるとしても問題はない。

2  原告らの算定方法によった場合、原告らの減歩の割合が、前記平均減歩率九・四八パーセントに比べて大きいことは、明らかである。

従前地の面積に比べて換地の面積の割合が小さくなる原因としては、(一)従前地の評価が低いこと、(二)換地の評価が高いこと、(三)調整地を取得していることなどが考えられる。その他、原告落合春美と同落合君江、同落合進と同落合小夜子、同西尾幸三と同西尾かまのように、親族や相続人らである場合などには、これらの関係者の希望に従って換地が指定されていることがあり、それらの事情をも考慮して、減歩率を算定しなければならない。

このうち、(一)、(二)については、前記評価の適正さに関することであり、土地改良法上認められない評価事項を加味しており、その結果による影響が減歩率の数字にも反映していると思われる上、これらを含む個々の評価の正当性については、前記四と同じくその証明がないことになる。他の組合員とのいわゆる横の関係における照応についても、その証明がないということになる。

3  いわゆる横の関係における照応として減歩率が他の組合員と比べて大きいという点については、評価の点を除けば、調整地の取得の有無が最も大きな原因となり得る。そこで、次に調整地処分について、判断する。

六  争点5(調整地の処分は適法か。)について

1  本件事業において、調整地が設けられた経緯、改良区が調整地を組合員に売却したこと、右売却は、本件換地処分においては、形式的には増換地の体裁を取っているものの、実際には改良区と組合員との間の売買であることは、前記二で認定したとおりである。

2  しかしながら、土地改良法には、土地区画整理法のように、施行者あるいは施行者から事業の委託を受けた者が余剰地を取得したり、それを売却して金銭を得ることを認める旨の規定はない。したがって、法がこれを許容しているかどうかは、解釈にゆだねられることになるので、以下検討する。

まず、余剰地は減歩によって生み出されるものであるから、これが、農地の集団化等により農業の生産性を向上させるという法の趣旨(一条)に沿うものでないことは明らかである。

また、減歩は、土地所有者の権利を害するものである以上、原則として許されるべきではない。土地区画整理法における、施行者らによる余剰地の作出及びその一方的取得も、同法の特に認めた権限ないし効果であると考えられ、法律の規定がない場合には、許されるべきものではないと考えられる。

さらに、法は、一定の土地を換地として定めないでおくことができる場合としては、新たな土地改良施設用地や農業経営合理化のために必要な施設の用地を共同減歩の方法によって生み出す場合(五三条の三)と、従前の土地の所有者の申出ないし同意によって不換地にした当該土地の面積の範囲内で、公共用地等を設けるような場合(五三条の三の二)を規定しているにすぎない。これは、同じく法の目的である農業生産の基盤の整備及び開発に資する場合に、農地の集団化という要請を後退させた例外的な規定であり、換地とならない土地が生み出される場合を、右各場合に限定しているものと考えられる。

以上のことからすれば、法は、当初から売却を予定して換地とされない余剰地を設けることは、許容していないことはもちろん、事業を進める必要上一定の土地を調整地として未指定地を作ること自体は許容しているとしても、これを安易に売却により処分することを許容してもいないというべきである。

3  前記認定二によれば、本件事業においては、<1>事業費用を捻出する必要、<2>八田川の河川改修のための用地を共同減歩により捻出するため、買収用地に代わる換地用の土地を確保する必要、<3>本件工区は地域が広く、資産価値の大きく異なる土地が存在し、換地に際し等級差評価を行うことが必要であったが、変動時期のため後に等級差の内容を決定するものとされたため、その際に調整できるようにする必要、<4>本件事業では、全体の確定測量を待たず、工事が完了したところから順番に換地発表をしていくため、初めから全体の減歩率を決めていかなければならなかったことなどの理由から、換地の調整などに備えて通常設けるより相当広い調整地が設けられたものと認められる。

証人安藤俊人は、八田川の河川改修のための用地を共同減歩により捻出する代わりに改良区が取得する買収費用で、組合員が負担すべき事業費用が賄えると考えたと証言するが、調整地処分金の一部は、最終的に事業費用に充てられているから、当初調整地を設けることとした際に、調整地の売却代金を費用に充てようとする意図が全くなかったとは言いきれない。

そして、<2>と<3>については、土地改良法上、共同減歩したり、農業評価以外の要素を加えることには問題があるから、これらの事由をもって調整地を正当化する根拠とはなし難いが、組合員もこれを承知していたのであるから、これをもって直ちに調整地を設けたことが違法であるとまでは言い難い。<4>については、技術的な面から調整地を設ける必要性があったというべきである。

以上からすると、調整地の設定には、一部事業費用に充てることを意図していたと思われる点がある、その限りで違法というべき点があるが、調整地全体の設定が違法であると言いきれるものではない。

4  しかしながら、改良区による調整地の売却については、売却金を組合員で分配したり、遊興に費消したりするなどしており、このような処分内容から見て、安易にこれを売却し、結果として、組合員の財産を換地処分によって侵害したと評価されてもやむを得ないものがある。

組合員全員が金銭の分配を受けているのであるから、不公平な処理ではないとしても、本来であれば土地として得られるはずであったものを、金銭という形でしか取得できなかったのであるから、公平であるから問題がないとすることはできない。

実際、組合員に対し、調整地から一律三パーセントの割戻しが行われた後も、減歩率は九・四八パーセントにしかならず、その割合が大きいことは、原告らの大きな不満となっていたのであるが、この段階で、調整地を可能な限り組合員に割り戻すように割戻率を大きくする余地はあったと思われる。

このような見解に対しては、三パーセント以上にすると、土地が細切れになり、農地の集団化に反する結果が生ずるとの反論があり得よう。現に、本件換地処分についても、原告落合君江から七四番、二五六番について、原告落合進、同落合小夜子からは八三番について、換地の面積が小さいとして、違法の主張がなされている。しかしながら、調整地処分の内容として、一〇〇平方メートル未満の土地については、隣地所有者が取得したり、区域内の所有者により案分取得するものとされたところ、割戻率が三パーセントより大きくされ、換地交付率が増やされた場合においては、これらの土地については調整地として買い受けるまでもなく、増換地として割り当てることができた可能性が大である。原告落合四十二は隣地の九四番二ないし四の土地が、同原告に対する換地の対象から外されたことを違法理由として述べているが、これも割戻率が三パーセントにとどまったことの結果といえなくもない。

一〇〇平方メートル以上の土地に限っても、二万五〇〇〇平方メートルの面積の調整地が、入札により売買されたことは、ほかにとり得る方法がなかったというには、面積が大きすぎるのみならず、組合員に対する影響も大であり、決してやむを得ない措置ということはできない。

以上のとおり、調整地の処分は、安易に組合員の財産権を侵害したものといわざるを得ず、右違法は、決して、本件換地処分を取り消すまでもない微小な瑕疵ということはできない。

5  そして、平成四年一二月二七日に第三回の調整地の売却が終了した後、平成五年三月一一日、本件工区換地予備会議において、換地計画書の確認が行われ(甲六八及び乙二六)、続いて、同月二六日の換地会議において、換地計画が決定されているところ(乙八)、右換地計画は、調整地処分により取得した土地を含めた換地が、従前地に照応するとされて、内容が決定されているものである(なお、乙八によれば、原告らは、右換地会議を欠席しており、右換地計画に賛成していたものではない。)。

そして、右で述べたように、本件調整地の設定及び売却が違法なものである以上、右瑕疵を前提とした換地計画は、違法なものである。また、換地計画と換地処分とは、一つの効果を目指した一連の手続中の処分であって、両者は相結合して土地改良事業の完成を目的とするものであるから、前者の違法は後者の違法に承継されるといえる。したがって、違法な換地計画を前提とした本件換地処分もまた違法である。

被告は、右調整地の売却は改良区が行ったものであり、被告の処分とは無関係と主張するが、右のとおり違法性は承継されるから、被告の主張は理由がない。

七  以上判示したところによれば、原告らに対する本件換地処分は、従前地の地積の認定において、原告西尾要、同梶田冨美子、同西尾かまの従前地に関して問題があるほか、原告ら全員に関して、従前地及び換地が、法の認める農業評価以外の要素を加えて評価されており、農業評価についても、これが適正になされたことの証明がなく、その結果、公平な減歩率になっているとの証明もないから、照応原則に違反する違法な処分であるといわざるを得ないし、調整地の設定及び処分は、法の認めない違法な処分であり、本件換地処分の違法原因となる。

原告らの請求は、原告らに対する本件換地処分の取消しを求める限度において理由があるから、これを認容し、その余の請求についてはこれを却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野田武明 裁判官佐藤哲治、同達野ゆきは、転勤につき署名押印できない。裁判長裁判官 野田武明)

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